スペシャルティコーヒーとは?一般のコーヒーとの違い
はじめに
当店でも取り扱っている「スペシャルティコーヒー」。カフェのメニューやコーヒー豆の説明で目にする機会が増えていますが、実際にどのようなコーヒーを指すのか、一般的なコーヒーと何が違うのかご存知ですか?この記事では、スペシャルティコーヒーの定義から特徴、一般コーヒーとの違いまで、わかりやすく解説していきます。
スペシャルティコーヒーとは
スペシャルティコーヒーは1970年代後半にアメリカで提唱された革新的な概念です。単なる高級コーヒーではなく、風味特性が明確で、その土地特有の個性(テロワール)が表現されていることが重要です。スペシャルティコーヒーの定義は、SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)基準やSCA(スペシャルティコーヒー協会)基準などがありますがここではSCAの基準について紹介します。
SCAによるスペシャルティコーヒーの定義
SCAでは、コーヒーの品質を100点満点で評価する「カッピングスコア」を使用し、80点以上のものをスペシャルティコーヒーと認定しています。SCAのカッピング評価項目は以下の10項目です。
- フレーグランス/アロマ(乾燥時と湯を注いだ時の香り)
- フレーバー(味わい)
- アフターテイスト(後味)
- アシディティ(酸味)
- ボディ(口当たり)
- バランス
- ユニフォーミティ(カップ間の均一性)
- クリーンカップ(雑味のなさ)
- スウィートネス(甘味)
- 総合評価
これらの項目を各10点満点で評価し、合計点が80点以上のコーヒーが「スペシャルティコーヒー」として認められます。また、生豆の段階での欠点豆の混入率や、トレーサビリティ(生産履歴の追跡可能性)も重視されています。
スペシャルティコーヒーと一般コーヒーの違い
1. 品質と評価基準
スペシャルティコーヒー
- SCA基準でカッピングスコア80点以上
- 加点方式による評価(豆の個性や特徴を積極的に評価)
- 欠点豆がほとんど含まれない
- 独自の風味特性を持つ
一般コーヒー(コモディティコーヒー)
- 減点方式による評価(欠点があればポイントを引く方式)
- 欠点のなさを重視するため、個性や特徴が評価されにくい
- コモディティ(大量生産品)として取引される
- ブレンドによって一定の味を保つことが多い
2. 生産方法と透明性
スペシャルティコーヒー
- 栽培から収穫、精製、焙煎まで細部にこだわる
- トレーサビリティが確保されている
- 生産者の顔が見える関係性
一般コーヒー
- 大量生産が主流
- 生産者情報が不明確なことが多い
- コスト効率重視の生産体制
3. 味わいの複雑性
スペシャルティコーヒー
- フルーティーな酸味や花のような香りなど、複雑な風味プロフィール
- 産地や品種による個性が明確
- ライトからミディアムロースト中心の焙煎
一般コーヒー
- 苦味や焙煎香が主体
- 標準化された味わい
- ミディアムからダークロースト中心の焙煎
評価方式の違い~減点方式から加点方式へ~
伝統的な減点方式
従来の一般コーヒーの評価は、理想的な状態からどれだけ欠点があるかを減点していく方式でした。これは欠点豆の割合や風味の欠陥を探すことが中心となり、「問題がない」ことを良しとする評価方法です。この方式では、個性的な風味や特徴を評価する項目がなく、地域特有の個性が評価されにくいという課題がありました。
スペシャルティコーヒーの加点方式
対照的に、スペシャルティコーヒーで採用される加点方式は、コーヒーの持つ良い特性や個性を積極的に評価します。フルーティーさ、フローラル感、甘味、複雑性などの特徴に対して点数を与えていくため、地域や品種特有の個性が正当に評価されるようになりました。この評価方法への転換がスペシャルティコーヒー文化の発展に大きく貢献しています。
カップ・オブ・エクセレンス(COE)とスペシャルティコーヒー
スペシャルティコーヒーの世界では、「カップ・オブ・エクセレンス(Cup of Excellence、略称COE)」という国際的なコーヒーコンペティションが重要な役割を果たしています。COEは「コーヒーのオリンピック」とも呼ばれ、参加国の最高品質のコーヒーを厳格な審査を通じて選出します。
COEの特徴
- 複数段階の盲味審査を実施
- 国際審査員による厳格な評価
- 最終審査では85点以上のスコアが必要
- 受賞したコーヒーはオークションで高値で取引される
- 生産者への直接的な経済的恩恵が大きい
COEで高評価を得たコーヒーは、スペシャルティコーヒーの中でも特に高品質で希少価値が高いものとして認識されています。これらのコーヒーは、スペシャルティコーヒーの最高峰を体験できる貴重な機会を提供しています。
スペシャルティコーヒーを楽しむポイント
産地や品種の特徴を知る
エチオピアのイルガチェフェやパナマのゲイシャなど、産地や品種によって全く異なる風味を楽しめるのがスペシャルティコーヒーの魅力です。自分好みの産地や品種を見つけてみましょう。
抽出方法にこだわる
ハンドドリップ、エアロプレス、サイフォンなど、抽出方法によって引き出される味わいが変わります。豆の特徴を最大限に活かせる抽出方法を試してみましょう。
焙煎日をチェック
スペシャルティコーヒーは鮮度が重要です。焙煎後2週間以内のものを選ぶと、より豊かな香りと味わいを楽しめます。
まとめ
スペシャルティコーヒーは、単なる高級コーヒーではなく、SCA基準によるカッピングスコア80点以上の品質基準を満たし、生産過程の透明性と複雑で多様な風味特性を持つコーヒーです。従来の減点方式から個性を重視する加点方式へと評価方法を転換したことで、各地域や品種特有の個性が評価されるようになりました。
またカップ・オブ・エクセレンス(COE)のようなコンペティションがスペシャルティコーヒーの品質向上と認知拡大に貢献しています。
一般的なコーヒーと比べると価格は高めですが、その分だけ生産者の努力や情熱が詰まった一杯を味わうことができます。まずは気軽に自分の好みに合ったスペシャルティコーヒーを探してみてはいかがでしょうか。